モンゴルの大草原で遊牧体験。子どもが学ぶゲルでの暮らしと自然との共生
モンゴルの広大な大草原で、遊牧民のゲルに滞在するという体験は、都市での暮らしとは全く異なる、非日常的な異文化体験となります。子どもにとって、この体験は多くの学びと成長の機会を与えてくれるものです。今回は、私たちが実際に体験したモンゴルでのゲル滞在と、そこで子どもが得た学びについてご紹介します。
モンゴルの大草原へ:ゲル滞在を選んだ理由
私たちが子連れでの海外旅行先としてモンゴルを選び、ゲル滞在を体験してみようと考えたのは、日本の日常生活では決して得られない、広大な自然の中でのシンプルな暮らしに触れる機会を子どもに与えたいと考えたためです。情報化社会の中で育つ子どもたちが、自然の力強さや、昔ながらの人と自然、そして動物との関わり方から何かを感じ取ってくれるのではないか、という期待がありました。
ゲルでの暮らし:具体的な体験内容
私たちが滞在したのは、ウランバートルから車で数時間移動した、比較的観光客の受け入れ体制が整っているエリアにあるツーリストキャンプのゲルです。個人宅へのホームステイも可能ですが、子連れの場合は水回りなどの設備が整っているツーリストキャンプの方が安心して過ごせる場合が多いです。
滞在先の情報(例): * 場所: 首都ウランバートルから西へ約300kmのフレー国立公園周辺(特定のキャンプ名は避けるため抽象化) * 時期: 7月上旬(モンゴルのベストシーズンの一つ) * 期間: 3泊4日 * 費用: 1泊あたり大人〇〇USD、子供〇〇USD(食事込み、アクティビティ別途)※具体的な金額はキャンプにより異なるため目安を記載 * 予約方法: 現地の旅行会社またはキャンプに直接問い合わせる * 子連れ条件: 特に年齢制限はありませんでしたが、衛生面や体調管理には注意が必要です。
ゲルでの生活は、想像以上に快適ながらも、都市生活との違いを肌で感じるものでした。電気はソーラーパネルで供給されるため、夜間の使用には限りがあり、 Wi-Fiは限られた共有スペースでのみ利用可能でした。水は貴重で、シャワーやトイレは共同の施設を利用します。食事は、モンゴルの伝統料理が中心で、羊肉や乳製品が多く使われます。
滞在中、私たちは以下のような様々な体験をしました。
- ゲルでの宿泊: 円形のユニークな形のゲルでの就寝、夜は満天の星空を観察。
- 家畜との触れ合い: 馬、羊、ヤギなどの家畜を間近で見たり、餌やりを体験したり。
- 乗馬・ラクダ乗り: 広大な草原を馬やラクダに乗って散策。
- 遊牧民の家庭訪問: ツアーの一環で、近くに暮らす遊牧民のゲルを訪問し、スーテイツァイ(ミルクティー)や伝統的なお菓子をごちそうになる。
- 伝統料理体験: ゲルでの食事を通じて、モンゴルの食文化に触れる。
- 大自然での遊び: 草原を走り回る、石を積む、草花を観察するなど、自然の中での自由な遊び。
体験中の子どもの反応と具体的なエピソード
私たちの小学低学年の子どもは、初めて見るゲルの形や室内の装飾に目を輝かせ、すぐに興味津々でした。特に印象的だったのは、家畜との触れ合いです。都会では動物園でしか見ることのない羊やヤギが目の前にいることに最初は少し戸惑っていましたが、餌をあげたり、毛並みに触れたりするうちに慣れていき、動物たちの穏やかな様子に癒されているようでした。
乗馬体験では、最初は緊張した面持ちでしたが、広々とした草原を馬に乗って進むうちに笑顔が見られるようになりました。「馬って速いね!」「風が気持ちいい!」と、普段の生活では得られない解放感を感じていたようです。
遊牧民のゲルを訪問した際、言葉は通じませんでしたが、ホストファミリーがあたたかく迎え入れてくれたこと、小さな子どもたちが私たちの子どもに話しかけてくれたことで、言葉の壁を越えたコミュニケーションを体験できました。子どもは、ホストのおばあさんが作ってくれたスーテイツァイを不思議そうに飲み、伝統的なお菓子を美味しいと笑顔で食べていました。
夜、ゲルの外に出て満天の星空を見た時には、その数の多さと明るさに圧倒され、しばらく言葉を失っていました。「こんなにたくさんの星があるんだね」とつぶやき、宇宙の広大さを肌で感じているようでした。
体験を通じた子どもの学びと成長
このモンゴルでのゲル滞在は、子どもに多くの学びをもたらしました。
まず、自然の偉大さです。果てしなく続く大草原、刻々と変わる空の色、夜の星空など、雄大な自然の中に身を置くことで、人間がいかに小さな存在であるか、そして自然の力強さと美しさを実感したようです。
次に、遊牧民の知恵と暮らしです。電気や水道が当たり前ではない環境で、人々が自然と共存しながら、どのように生活を営んでいるのかを知りました。ゲルの構造が厳しい自然環境に適応していること、家畜が生活の糧であり大切な家族であること、質素ながらも豊かな人間関係があることなど、教科書では学べない生きた知識を得ました。
また、異なる文化への理解も深まりました。言葉は通じなくても、笑顔やジェスチャーで心が通じ合うことを体験し、世界には多様な生活様式や価値観があることを肌で感じました。これは、将来グローバルな社会で生きていく上で非常に重要な基盤となるでしょう。
さらに、困難への適応力も養われたと感じています。慣れない環境(トイレ、シャワー、食事など)に戸惑う場面もありましたが、それらを乗り越え、新しい環境に順応しようと努める姿勢が見られました。
親として感じたこと、考察
親として、子どもが広大な自然の中で無邪気に駆け回り、動物たちと触れ合い、異文化に触れる姿を見られたことは大きな喜びでした。この旅は、単に観光地を巡るのではなく、人々の暮らしや文化の根幹に触れる体験であり、私たち親自身にとっても、現代社会の便利さや物質的な豊かさについて改めて考えさせられる貴重な機会となりました。
情報過多な現代において、子どもたちが五感をフルに使って自然や人々と直接的に関わることの重要性を改めて認識しました。子どもは、この旅を通じて、見慣れないものに対する好奇心や、新しい環境に飛び込む勇気、そして地球上の多様な生き方へのリスペクトを育んでくれたと感じています。
子連れでのゲル滞在の注意点とコツ
子連れでモンゴルのゲルに滞在する際は、いくつかの注意点があります。
- 体調管理: 食事が合わない可能性や、衛生環境の違いによるお腹の不調などが考えられます。常備薬(特に胃腸薬、解熱剤)は必ず持参しましょう。
- 服装: モンゴルの天候は変わりやすく、昼夜の寒暖差が大きいです。重ね着できる服装を準備し、夏でも朝晩は冷え込むため長袖やフリースが必要です。日差しが強いため帽子やサングラスも必須です。
- 持ち物: 電気が限られるため、懐中電灯やモバイルバッテリーがあると便利です。乾燥対策として保湿剤、虫除けスプレーも忘れずに。トイレットペーパーやウェットティッシュも多めに持っていくことをおすすめします。
- 食事: 好き嫌いが多い子どもがいる場合は、日本から簡単なレトルト食品やふりかけなどを持参すると安心です。乳製品や羊肉が苦手な場合は、事前にキャンプに相談可能か確認しましょう。
- 遊び道具: 自然の中での遊びが中心ですが、絵本や簡単なカードゲームなど、ゲルの中で過ごす時間のための遊び道具があると便利です。
- 安全面: 家畜に近づきすぎない、乗馬やラクダ乗りではガイドの指示に従うなど、安全に関する注意点を子どもによく説明しましょう。
まとめ
モンゴルの大草原でのゲル滞在と遊牧体験は、子どもにとって忘れられない貴重な異文化体験となるでしょう。広大な自然の中でのシンプルな暮らし、動物との触れ合い、そして遊牧民の人々との温かい交流は、子どもの視野を広げ、多様な価値観を育む上で大きな財産となります。単なる観光では得られない「生きる知恵」や「自然との共生」といった深い学びを、子どもと一緒に体験してみてはいかがでしょうか。