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モロッコで幾何学模様のタイル作り体験!子どもが学ぶイスラム芸術と手仕事の魅力

Tags: モロッコ, タイル作り, 異文化体験, 子連れ海外, 伝統工芸

モロッコで触れる、幾何学模様に込められた世界観

モロッコを訪れる際、多くの場所で目に留まるのが、壁面や床を彩る美しいタイル(ゼッリージュ)です。複雑で緻密な幾何学模様、鮮やかな色彩は、モロッコの伝統的なイスラム芸術の象徴とも言えます。一般的な観光ではその美しさを眺めるだけですが、子連れでの旅においては、この伝統的なタイル作りを体験することが、子供にとって特別な学びの機会となるのではないかと考えました。

今回の旅では、特に伝統工芸が盛んな街、フェズの工房を訪れ、子供と共にゼッリージュのタイル作り体験に参加しました。この体験を通じて、子供が単に「きれい」と感じるだけでなく、そこに込められた文化や手仕事の価値に触れることを期待しました。

タイル作り体験の詳細:場所、手順、子連れ向け情報

体験に参加したのは、フェズ旧市街(メディナ)の郊外にある、代々続く伝統的なタイル工房です。事前にウェブサイトを通じて予約を行いました。料金は一人あたり約300DH(ディルハム)で、所要時間は約2時間でした。年齢制限については特に明記されていませんでしたが、細かい作業を含むため、ある程度の集中力が必要となります。私たちが参加した際は、5歳以上であれば十分に楽しめているようでした。

体験は、まず職人さんがタイルの製造工程を一通り説明してくれることから始まります。粘土を成形し、焼き、色付け、そして何よりも特徴的なのが、焼いたタイルを一つ一つ手作業で叩き割って小さな幾何学ピースを作り出す工程です。この「割る」という作業自体が一つの技術であり、職人さんの正確でリズミカルな手つきに子供たちは目を奪われていました。

次に、色付けされていない小さなタイル片に、伝統的な顔料を使って自分たちで色を塗る体験をしました。赤、青、緑、黄色、白など、モロッコらしい鮮やかな色を選びます。子供たちはパレットに並んだ色に興味津々で、楽しそうに筆を進めていました。

そして、この体験のクライマックスは、職人さんが割った様々な形のタイルピースを使って、自分だけの小さなゼッリージュ模様を作る工程です。見本を見ながら、あるいは自由に、小さなピースを組み合わせていきます。この作業はまるで高度なパズルのようであり、子供たちは試行錯誤しながら、真剣な表情でタイルを並べていました。完成したものは持ち帰ることができ、旅の良い記念となります。

体験中の子供たちの反応と具体的なエピソード

私たちの子供は、最初こそ職人さんの手際の良い作業に圧倒されていましたが、自分でタイルに色を塗る段になると積極的に取り組んでいました。特に印象的だったのは、タイルのピースを組み合わせて模様を作る作業です。見本にある複雑な星形や多角形の組み合わせを見ながら、「これはどうなっているの?」「この三角をここに入れるのかな?」と真剣に考えていました。

最初はバラバラだった小さなピースが、並べ方によって美しい幾何学模様になること、そしてそのパターンが無限に広がっていく可能性に気づいたようです。また、職人さんが無駄なく正確にタイルを割る様子を見て、「なんでできるの?」と不思議そうに尋ねていました。手先の技術や集中力が、美しいものを作り出す上でいかに重要か、言葉ではなく感覚で理解した場面だと感じています。

休憩時間には、工房の中庭で他の参加者や職人さんの子供たちと少し交流する機会もありました。言葉は通じなくても、笑顔やジェスチャーでコミュニケーションを取ろうとする姿も見られました。

体験を通じた子供の学びと成長

このタイル作り体験で、子供が最も学んだのは、イスラム文化における幾何学模様の意味合いです。イスラム教では偶像崇拝が禁止されているため、芸術表現として植物の唐草模様やカリグラフィー、そしてこの複雑な幾何学模様が発展しました。単なる装飾ではなく、無限に広がる宇宙や神の創造性を表現していること、数学的な法則に基づいていることなどを、職人さんの簡単な説明や、実際にピースを組み合わせて模様を作り出す作業を通じて感じ取ったようです。

また、一つの美しいタイルが、土をこねることから始まり、焼き、色を付け、手で割り、そして緻密に組み合わされるという、気の遠くなるような多くの工程と職人さんの手仕事によって生み出されていることを肌で感じました。現代の大量生産品とは異なる、時間と手間をかけたものづくりの価値を理解する良い機会となりました。

さらに、様々な国から来た人々が同じテーブルで作業をする中で、多様な背景を持つ人々と一つの体験を共有する楽しさも感じたようです。言葉が完璧に通じなくても、共通の作業を通じて通じ合えることがあると学んだ様子でした。

親として感じたこと、そして子連れでの参加のヒント

親として、この体験は単なる工作教室ではなく、子供が異文化の美意識や価値観に深く触れる貴重な時間だと感じました。複雑な幾何学模様が持つ意味を知り、手仕事の温かさや大変さを体感することは、教科書だけでは得られない生きた学びです。子供が集中して細かい作業に取り組む姿や、完成した時の達成感に満ちた表情を見ることができ、連れてきて良かったと心から思いました。

子連れで参加する際のヒントとしては、工房によっては土埃が多い場合があるため、汚れても良い服装が良いでしょう。また、細かい作業が続くので、子供の集中力が途切れないよう、途中で休憩を挟んだり、簡単な工程から始めさせたりする工夫が必要です。工房によっては、小さな子供向けのより簡単な体験コースを用意している場合もありますので、予約時に確認することをお勧めします。完成品を持ち帰る際は、割れないように緩衝材などでしっかり保護することも忘れずに行いましょう。

まとめ

モロッコでのタイル作り体験は、子供にとってイスラム芸術の奥深さや、伝統的な手仕事の価値を肌で感じる素晴らしい機会となりました。幾何学模様に隠された意味を知り、自分の手で小さなタイルピースを組み合わせて模様を作り出す過程は、創造性と集中力を養うだけでなく、文化への理解を深めることにつながります。

異文化に触れる旅において、見るだけでなく、実際に手を動かして体験することは、子供の心に強く残り、多様な価値観を受け入れる豊かな感性を育むことでしょう。モロッコを訪れる際は、ぜひご家族で伝統的なタイル作り体験を検討してみてはいかがでしょうか。